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大阪地方裁判所 平成4年(わ)4098号 判決

本店所在地

大阪市旭区太子橋三丁目二番八-二〇三号

株式会社

大志

(右代表者代表取締役 高野武志)

本籍

京都府綴喜郡田辺町松井ケ丘三丁目一五番地八

住居

同町大字大住小字責谷四八番地の八

会社役員

高野武志

昭和二〇年九月一三日生

右株式会社大志に対する法人税法違反、右高野武志に対する所得税法違反、法人税法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官中井隆司出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社大志を罰金一三〇〇万円に、被告人高野武志を懲役二年及び罰金三二〇〇万円に処する。

被告人高野武志につき、右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人高野武志に対し、この裁判の確定した日から三年間その懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社大志(以下「被告会社」という。)は、大阪市旭区太子橋三丁目二番八-二〇三号に本店を置き、不動産売買業等を営むもの、被告人高野武志(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役として業務全般を統括するとともに、大阪府守口市大枝南町七六番地において、「大志住宅」の名称で不動産売買業等を営むものであるが、被告人は

第一自己の所得税を免れようと企て

一  昭和六二年分の総所得金額が三一二三万七四二一円で、これに対する所得税額が一〇八〇万四八〇〇円であるのに、事業に係る実際の所得金額とは関係なく、殊更過少な所得金額を記載した所得税確定申告書を作成して所得を秘匿したうえ、昭和六三年三月一五日、大阪府門真市殿島町八番一二号所在の所轄門真税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二九〇万円で、これに対する所得税額が六万七四〇〇円である旨内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、所得税一〇七三万七四〇〇円を免れた(別紙1(1)及び(2)の総所得金額計算書、修正貸借対照表及び修正損益計算書、別紙4税額計算書参照)

二  昭和六三年分の総所得金額が一億四六一七万二二六一円で、これに対する所得税額が七六二八万八〇〇〇円であるのに、前同様の手段により所得を秘匿したうえ、平成元年三月一五日、前記門真税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が、三〇〇万円で、これに対する所得税額が四万六四〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、所得税七六二四万一六〇〇円を免れた(別紙2(1)及び2(2)の総所得金額計算書、修正貸借対照表及び修正損益計算書、別紙4税額計算書参照)

三  平成元年分の総所得金額が一億一二八四万四四九円、分離長期譲渡所得金額が三〇一三万八五一円で、これに対する所得税額が五二四〇万九六〇〇円であるのに、前同様の手段により所得を秘匿したうえ、平成二年三月一三日、前記門真税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三一〇万円で、これに対する所得税額が四万五一〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、所得税五二三六万四五〇〇円を免れた(別紙3(1)ないし(3)の総所得金額計算書、修正貸借対照表及び修正損益計算書、別紙4税額計算書参照)

第二  被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における実際の所得金額が一億二五六一万五〇二六円、課税土地譲渡利益金額が四七七四万六〇〇〇円で、これに対する法人税が六三五一万四七〇〇円であるのに、被告会社所有の土地建物を松浦保勝らに六億四三五〇万円で売却した取引につき、これを株式会社大宝に五億四四五〇万円で売却したように仮装して売上を圧縮するなどの行為により、右所得の一部を秘匿したうえ、同年五月三一日、大阪市旭区大宮一丁目一番二五号所在の所轄旭税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二五三四万九三二五円、課税土地譲渡利益金額が〇円で、これに対する法人税額が九〇八万四五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、法人税五四四三万二〇〇円を免れた(別紙5(1)及び(2)の修正損益計算書、別紙6税額計算書参照)

ものである。

(証拠の標目)<注>括弧内の算用数字は記録中の証拠等関係カード(検察官請求分)記載の当該番号の証拠を示す。

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(69、72)

一  収税官吏作成の査察官調査書二通(24、26)

判示第一の事実について

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書七通(65ないし68、70、71、73)

一  検察事務官作成の捜査報告書(7)

一  収税官吏作成の査察官調査書三六通(8ないし15、17ないし23、25、27ないし46)

判示第一の一の事実について

一  収税官吏作成の脱税額計算書(1)

一  収税官吏作成の証明書(4)

判示第一の二の事実について

一  収税官吏作成の脱税額計算書(2)

一  収税官吏作成の証明書(5)

判示第一の三の事実について

一  収税官吏作成の脱税額計算書(3)

一  収税官吏作成の査察官調査書三通(16、47、48)

一  収税官吏作成の証明書(6)

判示第三の事実について

一  亀井豊樹の検察官に対する供述調書

一  友松ヒロ子、松浦保勝、石谷隆一の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  検察事務官作成の捜査報告書(51)

一  収税官吏作成の脱税額計算書(49)

一  収税官吏作成の捜査官調査書六通(52ないし57)

一  収税官吏作成の証明書(50)

一  法人の登記簿謄本

(法令の適用)

被告人の判示第一の各所為はいずれも所得税法二三八条一項に、判示第二の所為は法人税法一五九条一項に該当するところ、判示第一の各罪については所定の懲役刑と罰金刑とを併科し、かつ、各罪につき情状により所得税法二三八条二項を適用し、判示第二の罪については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の二罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役二年及び罰金三二〇〇万円に処し、同法一八条により、右罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

被告人の判示第二の所為は被告会社の業務に関しなされたものであるから、被告会社については、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定刑の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用して罰金の額を免れた法人税の額以下とし、その金額の範囲内で被告会社を罰金一三〇〇万円に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 松下潔)

別紙1-(1)

総所得金額計算書

〈省略〉

修正貸借対照表

〈省略〉

別紙1-(2)

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2-(1)

総所得金額計算書

〈省略〉

修正貸借対照表

〈省略〉

別紙2-(2)

修正損益計算書

〈省略〉

別紙3-(1)

総所得金額計算書

〈省略〉

別紙3-(2)

修正貸借対照表

〈省略〉

別紙3-(3)

修正損益計算書

〈省略〉

別紙4

税額計算書

〈省略〉

別紙5-(1)

修正損益計算書

〈省略〉

別紙5-(2)

修正損益計算書

(土地譲渡にかかる譲渡利益金額計算書)

〈省略〉

税額計算書

〈省略〉

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